ボルボ本社のある国、スウェーデンはどんな国?

ボルボはスウェーデンを本拠におく企業グループで、トラック、航空機、船舶、建設機械を製造しています。自動車部門は1999年にフォードモーターに分離売却されましたが、「ボルボ」を冠した乗用車は現在も製造されています。そんなボルボ本社のある国、スウェーデンはどんな国であるか見ていきます。

スウェーデンの風土、歴史

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スウェ-デンは北欧のスカジナビア半島の中央及び東側にあり、45万平方キロの面積で日本の1.2倍あり、首都はストックホルム、北部は北極圏に入っています。半島西部には山脈が南北に連なり、気候は冬は寒く、夏も冷涼です。人口は約950万人(2013年)、グスタフ16世を戴く立憲君主国です。西にノルウェー、東にフィンランドがあります。スウェーデンの1人当たりの所得は日本より高く、福祉制度が充実しています。歴史的にスウェーデンは、北方ゲルマン人であるノルマン人が住んでいた地域で、中世にかけては自然神を崇拝する多神教で、ヨーロッパからロシアに至るまで「ヴァイキング」として活発に活動し、各地に国を建てました。ヴァイキングには野蛮なイメージがありますが、優れた航海技術で中世の時代にアイスランドや北米に到達するなど、進取の気性に富んでいました。その過程でキリスト教を受け入れ、13世紀にはフィンランドを含む同君連合国が生まれ、16世紀にほぼ現在の地域で王国が成立しました。この頃プロテスタントを受け入れ、19世紀までは活発に軍事的海外進出を行っていました。20世紀になって社会民主労働党政権が生まれてからは、福祉国家路線と武装中立政策を取り、両大戦にも参戦していません。冷戦時代は西側寄りな中立政策を通し、冷戦後は軍事的非同盟を唱えNATO(北大西洋条約機構)には参加しませんでしたが、1995年に欧州連合(EU)には加盟し現在に至っています。

スウェーデンの自然と文化

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スウェーデンの国民の多くは、南部に住んでいます。南部は肥沃な農耕地帯で、穀類を自給出来るほどの高い生産性を誇っています。北上するにつれ、針葉樹林や一部広葉樹林に覆われ、高原には湖沼が散在し豊かな自然があります。北西部はスカンジナビア山脈が連なっていて、最終的にラップランドに到達します。北極圏に位置するので、夏は白夜になり、冬はオーロラを楽しめます。スウェーデンには、「自然享受権」という中世にまで遡る権利があります。個人の所有地であっても、自由に森林や野原を通り、キノコやベリー類など自然の恵みを自由に摘むことができるのです。所有者や自然、野生の動植物を守ることが前提であるものの、原則として自由に散策できます。このような環境の中から、現在でも1,000万に満たない人口の国ですが、世界的に有名な人物を輩出しています。科学者で優れた実業家であったノーベル賞生みの親ノーベル、何度にもわたる死の危険を克服して中央アジアを探検したヘディン、物理学者オングストローム、女優グレタ・ガルボとイングリット・バーグマン、テニスのボルグ、スキーのステンマルク、世界最大の家具販売店の創業者イケア等々。

スウェーデンの工業とボルボ

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スウェーデンは北欧最大の高い技術力を持った先進工業国で、機械、鉄鋼、製紙、家具製造が盛んです。特に機械工業が主要産業になっていますが、その背景には、武装中立を国防の基本にしているため、専守防衛に特化した軍用機や戦車、艦艇を独力で確保する必要性から、軍需産業が盛んになった事情があります。軍事兵器製造のノウハウは民間利用に転化できることから、スウェーデンの高い技術力の背景には、国防政策と密接な関係にあることがうかがえます。機械工業を担う企業としては、ボルボとSAAB(サーブ)が特に有名ですが、現在サーブは、航空機・軍需品メーカーですが、かつて自動車製造部門で自動車を生産していました。ボルボはエンジン開発に優れた技術力があり、スウェーデンの戦闘機や攻撃機のエンジンは、ボルボが担当しており、日本の主要な企業のマリンディーゼルには、ボルボエンジンが採用されています。ボルボはトラック部門では世界有数のメーカーです。創業部門である自動車部門は、資本的には売却されて分離していますが、ボルボ・ブランドは燦然と存続し、環境に優れたディーゼル車が提供されています。